子どもの心理に着目した児童・生徒指導・生活指導とは −カウンセリングマインドとゼロトレランスとは−
2005.11.24トップへ掲示板メール学校心理学WebRing
児童・生徒の指導に役立つ本
▼児童・生徒指導は「寛容か?厳格か?」
生徒指導に寛容ダメ 文科省 米で成果、導入検討へ(2005.11.13)
 米国で麻薬や銃、暴力が蔓延(まんえん)した学校の再生に効果をあげたとされる生徒指導方針「ゼロトレランス(毅然(きぜん)とした対応)」について、文部科学省は、日本の教育現場への応用の可能性を探るため、専門家による調査研究会議を設置する方針を決めた。

 「ゼロトレランス」は直訳すると「寛容さゼロ」の意味。一九九七年、クリントン大統領(当時)が全米に呼びかけ浸透させた。学校が明確な罰則規定を定めた行動規範を生徒・保護者に示し、破った生徒にはただちに責任を取らせる。それまで教育現場で支配的だった、生徒の事情をよく聴き、生徒理解に重点を置いて指導する「ガイダンス」と呼ばれる手法とは一線を画し、絶対に許容しない厳格さで臨む。

 罰則は「教室から出す」「居残りや専用教室に入れる」「親を呼び出す」「校長が指導する」「停学や家庭謹慎」と段階的に重くなる。麻薬や非行、暴力行為などの場合は直ちに矯正する「オルタナティブスクール(代替校)」に転校させ、反省して立ち直れば元の学校に戻す。

 規律を失った一部の学校では、問題生徒の傍若無人な行動に対処できない教師が、ますます生徒の信頼を失い、学校運営が難しくなる悪循環に陥る傾向がある。  文科省ではゼロトレランスについて「日本の学校現場にそのまま導入できるかどうかはともかく、『ぶれない生徒指導』を確立する意味でも参考になるのではないか」と話しており、現在調査研究会議の人選を進めている。

▼ちょっと待った!児童・生徒指導!!
 1970年〜80年頃は、丸刈り強制などに象徴される“管理教育ブーム”だった。ところが、90年代に入ってから、“カウンセリングブーム”に代表されるように、“こころの教育ブーム”が起こった。前者が「ゼロトレランス」の視点に立っているのに対して、後者は“ガイダンス”の視点に立っている。結論から言えば、どちらが良いというのではなく、どちらも必要だということである。

 「ガイダンス」に重点を置いた生徒指導は、昨今の心理学ブームが背景にあり、臨床心理学を中心とした“カウンセリングマインド”が誤解・誤用されたのが原因。また、ゼロトレランスは、いきすぎると「管理教育」と批判された頃の教育に逆戻りする危険性がある。いずれにせよ、ガイダンス(カウンセリングマインド)・ゼロトレランスの両側面が大切なのであって、どちらが良いという議論は本末転倒であろう。

 教師の指導スタイルは、TPOに応じて使い分けられる必要があり、「ガイダンスやカウンセリングマインドを柱とした生徒受容型」が基本で、規律の遵守や危機回避に対しては「毅然、厳正なるゼロトレランス型」が適応されるべき。
 具体的には、普段の生徒への接し方は、和やかなムードやコーチング(傾聴)といった「ガイダンス」スタイルが大切で、遅刻や持ち物忘れ、規律の遵守や安全確保に対して「ゼロトレランス」スタイルが大切。しかしながら、現場教師にこのようなスタイルの使い分けやトレーニングが浸透しているわけではなく、児童・生徒指導の方針が現場レベルでは誤解されて浸透するおそれがあり、管理教育への逆戻りが懸念される。

 ゆとり教育やこころの教育が行き過ぎた“子ども迎合主義”であったことに、世間は薄々ながら気づき始めている。しかしながら、現場教師は、どうしても視野が狭くなりがちで、すでに管理教育の頃の弊害が忘れ去れている。そこへいきて「ゼロトレランス」容認の動きが出てきたのだから、現場教師がまた同じ過ちを犯すおそれがある。現場教師こそ、とくに世間の動きに敏感になり、そして確かなものを見抜く目が必要である。

 そのためにも、教師は“関連する本”をこれでもかというくらい読み、教員同士や異業種の人間と交流・議論を欠かすべきではないだろう。

子どもの心に着目した生徒指導・生活指導
 生徒指導や生活指導で頭を悩ます先生方は少なくないでしょう。いやほとんどの先生が,子どものことが理解できないとか,対応に困ると思ったことがあるでしょう。生徒指導や生活指導にマニュアルはありません。しかし,違った視点(心理学的な視点)で子どもを見てみると,指導方針が見えてくるかもしれません。ここでは心理学的に子どもの問題行動とその心理を考えてみたいと思います。その上で適切な指導法を考えるべきです。

 まず始めに,心理学的な視点とはなんでしょうか? 我々一般人はもとより,学校の先生方は,子どもの問題行動を目の当たりにして,指導を行うことでしょう。これは決して間違ってはいません。しかし,子どもの問題行動だけを見ていても問題行動が治まらないケースがあります。こういうときは,「なぜこの子はこういう問題行動を起こすのか?」という問題行動を起こすその心について考えてみる必要があるようです。このように,問題行動から見えてくる子どもの心に着目することが,心理学的な視点といえるでしょう。
 こうして子どもの心に着目し,対策を練る必要があります。これは子どもとの駆け引きです。得てして生徒指導・生活指導では,教師は一方的で威圧的になりがちです。こうした教師の態度は,子どもの反発心をかうことにつながります。こうしてますます険悪なムードのまま,指導が「教師対子どもの戦い」になっていまいます。こうしたい事態では指導の効果はほとんど期待できないでしょう。もちろん指導は必要です。しかし,そのやり方には考慮の余地があるはずです。

○指導上の心得
・問題行動だけではなく,その子がなぜそのような行動を起こしたのか考える。
・暴力という行為を叱っても,暴力を引き起こした感情や動機は否定・叱責しない。
・叱ることは必要だが,叱ることですべてが解決するわけではない。
・罪を憎んで人を憎まず。

○よくうそをつく子
 「宿題をやったけど家に忘れた」とか,明らかに誰かの物を盗ったのに「盗ってない」といったように,平気でしかもすぐばれるうそをつく子がいます。こういう子どもに,教師はつい腹を立ててどなったり,とことんまで追及したりするかもしれません。こうした教師の言動に対して子どもはますます責任逃れや,うそがばれないようにさらにうそを重ねたりします。もちろんうそを放っておいてはいけません。ただ,うそを追及するにもやりかたを考えた方がいいでしょう。
 なぜ子どもがうそをつくのか? これを忘れてはいけないでしょう。たまたまついたうそなのか,それとも常習的にうそをつく子なのか,それとも誰かをかばってついたうそなのか。子どもが損得勘定でうそをついていたら,うそをつくのをやめさせるように,というよりも,うそをつかなくてもいいように指導する必要があるでしょう。
 例えば,「宿題をやったけど家に忘れた」とうそをついた子に対しては,まず,宿題を出させたいのか,うそをつくのをやめさせたいのか,教師自身がはっきりさせておく必要があります。うそをつくのをやめさせたいのであれば,「先生怒らないから,本当は宿題をやってないのか,もってくるのを忘れたのか,どっちなの? 正直に言ってごらん」と言った方がいいでしょう。もちろん怒りをあらわにして言ってはいけませんが・・・。
 教師として,してはいけないのは,徹底的にうそをうそだと暴こうと追及することです。こうした行為は子どもとの対立を深めることにつながるでしょう。

○いじめ
 いじめの問題は,まずすぐに問題を解決しようとせず,中長期的な問題として考えるべきです。いじめをしている子に「○○くんをいじめるのをやめなさい」と言っても,無意味どころか逆効果の場合もあります。かといってほうっておくわけにもいきません。
 まず始めに「いじめなのか,からかい程度のたわむれなのか」を識別することです。いじめは,当事者がいじめと認識しているかどうか,多勢に無勢かどうか,中長期に渡って継続していることかどうかがポイントです。
 客観的に見ていじめだとしても,いじめる側が必ずしもいじめだと認識しているとは限りません。また,いじめられている子に「いじめられてるの?」とたずねても,必ずしも首を縦に振るとは限りません。こうした場合は,クラスメイトや他の教員,保護者などにたずねるなどして,事実関係確認をしたり,時には当事者に直接たずねてみるなど,状況に合わせて対策をとることです。
 教師としてしなければならないこと,してはいけないことがあるとしたら,いじめられている子に教師自身が解決しようと努力していることを伝え,いじめの苦しみそのものを共感的に理解してあげること,そして,いじめる側のいじめという行為を叱責しても,いじめるという感情や動機を叱責しないことです。「罪を憎んで人を憎まず」です。
 最後に「なぜいじめをするのか?」これは見逃せない問題です。教師自身にも心当たりがあるはずです。これは場合によっては学級会などで取り上げるのもいいでしょう。

○頻繁に体の不調を訴える子
 頭痛や腹痛などを頻繁に訴える子がいます。こうした子に対して,まず体調不良の原因が心理的なものなのか身体的なものなのかを考える必要があります。こころとからだは密接な関係があり,また,未分化な子どもにとってはなおのことですが,ちょっとした不安や緊張などから,頭痛,発熱,腹痛を引き起こすことはよくあることです。これは心身症や心気症の場合もあるので注意が必要です。また,仮病を訴える場合もありますが,この場合,なぜこの子は仮病を使うのかを考える必要があります。「おまえ,さっきまで元気だったのにうそをつくんじゃない。仮病だろ」といったように叱責することはかえってよくありません。これは仮病が良くないと叱るにしてもタイミングが悪すぎると言うことです。
 例えば,下痢などで胃腸が弱った人に,「おなか一杯たくさん食べるとことは体にいいことだよ」と言って,たくさん食べさせることは逆効果ですね。まずは弱った胃腸の回復を待ち,それから栄養のあるものをしっかりと摂ることが大切です。
 こう考えると,仮病だろうがなんだろうが,体調不良を訴える子に対しては,基本的に暖かく目で見てやることが大切です。体育が苦手・嫌いな子が,授業の前に「おなかが痛い」と訴えてくることがあります。こういう子には,機を見て「本当は体育が嫌だから,おなかが痛いって言っているんじゃないの?」とたずねてみるといいでしょう。もちろん,仮病か仮病じゃないかを追及するような態度ではいけません。そうした上で,何がどう不安・嫌なのかをきいてみて,「まずできることだけやってみよう」と少しずつ慣れさせたり,不安や嫌な要素を取り除いていくと良いでしょう。

○物を盗む子
 クラス内での盗み(教科書,ノート,給食費など金品の盗難)や,学校外での盗み(万引きや強盗,友だちの所有物を盗む)など,盗みをする子への対応はとても難しい問題です。初めてなのか常習なのか,その子の家庭環境や経済状況はどうなのか,単独犯なのかグループ犯なのか,手段なのか目的なのか(盗んだ物が欲しかったのか,盗むという行為を楽しんでいるのか)など,いずれにせよ,問題の解決には学校全体で慎重に取り組む必要があります。場合によっては秘密裏に行うことも必要でしょう。
 最も問題なのは,なぜ盗みをしたのかという動機です。盗んだ物そのものが欲しかったのか,あるいは盗みが何かの手段だったのか(いやがらせなのか,命令されたからなのか,盗むのが楽しいからなのか)。お小遣いを十分にもらっていなかったり,友人関係に問題があったり,恐喝に遭ったりしている場合も考えられます。背景的問題を把握することが不可欠でしょう。明らかに常習である場合には,警察や児童相談所,カウンセラーと相談する必要があります。


【楽天ブックス】幅広い専門書を揃えています
 ここでいう問題とは,心理発達学的に見て問題のある子のことです。不適応や神経症,各種障害(行為障害,人格障害,摂食障害,など),虐待(性的,心理的,身体的,ネグレクト),精神疾患(精神病),糖尿病,自律神経失調症など,こうした問題はすでに教師の指導の範疇を超えています。かといって放っておいていいという問題ではありません。児童相談所やカウンセラー,病院などへ相談し,関連施設と連携をとりながら対応していく必要があります。

○学習障害
 狭義には,知能に大きな問題がなく,かつ知的学習に困難を伴う障害で,学習の方法や意欲,努力不足が認められる場合は除かれる。失語,失認,想起の困難,難読,難書,難算や鏡映文字などが見られるのが特徴。広義には,学習そのもの(人間関係など,行動の変容)に対し困難を伴う状態のことを指す。

○心身症・神経症
 身体的症状が見られるが,原因が主に心理的なもの。脱毛症や摂食障害(思春期やせ症),吃音,チック,指噛み(爪噛み)など。

・摂食障害
 実際とはかけ離れた身体的イメージ(明らかにやせているのにまだ太っていると思っており,それが半ば強迫的信念となっているもの)をもち,過食あるいは拒食や意図的なおう吐し,もしくはこれを繰り返す。

・吃音
 無意識的,突発的に奇声や擬音を発したり,汚言を発したりする。

・チック
 無意識的,突発的に身体あるいは身体の一部が動いたり,奇抜な行動をとったり,奇声を発する。

 摂食障害を除いては,いずれも軽度のものが多く,自然と治癒するものが多いため,教師としては,問題行動そのものを指摘したり無理に矯正しないほうがよい。ただ,摂食障害は,健康上の問題もあるため,すみやかに病院などに相談をした方がよい。


(教心ネット:http://www.kyo-sin.net/)

トップページへ