教心ネット学校心理学講座 認知心理学(記憶のメカニズム)
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▼記憶の不思議
好きなアイドルやポケモンのキャラクターはすぐに覚えるのに,試験に必要な歴史上の人物はなかなか覚えられない。こんな不思議な現象に疑問をもったことはありませんか? 同じ「人」に関する記憶なのに,なぜ「覚えやすいもの」と「覚えにくいもの」があるのでしょうか?

▼記憶の種類
記憶には,「瞬時記憶」,「短期記憶」,「長期記憶」の3種類があります。

「瞬時記憶」では,文字通り記憶は瞬時に消滅します。「短期記憶」は,通常,数秒から数十秒の期間しか記憶することができず,また7桁前後(5〜9桁)の数字程度の情報量しか記憶できません。また,記憶したことを「長期記憶」にしないとすぐに忘れてしまいます。例えば電話番号を例に挙げてみましょう。電話番号は局番を入れてだいたい6桁ぐらいです。これなら短期記憶に記憶することができます。しかし市外局番を含めると電話番号は9桁から10桁の数字になります。これぐらいの量になると短期記憶では少し容量オーバーになります。ですから,市外局番を含めた電話番号は覚えづらく,局番以下の電話番号は覚えやすいのは「短期記憶」の性質によるものなのです。

「長期記憶」では,記憶できる量や期間はほぼ無限で,一度「長期記憶」に記憶されたものはほぼ永久的になくならないと考えられています。覚えたものが「短期記憶」だけにとどまるのか,「長期記憶」にまでなるのかどうかは,何度も同じ課題を反復(リハーサル)記憶したり,すでに覚えていることと関連づけて覚えたりする必要があります。つまりは,一般的には「覚える」ということは,記憶をこの「長期記憶」にすることを指します。

▼記憶の3つの過程
「記憶する」というと「覚える」ということを連想しがちですが,記憶には「覚えること」,「覚えていること」,「思い出すこと」の3つの過程があります。これらはそれぞれ「記銘」,「保持」,「検索」と呼ばれています。「覚える」という行為はしばしば「記銘する」ことだけだと勘違いされることがあります。

中・高生のみなさんの中に,テスト勉強などで必死に覚えても,なかなかテストの成績が良くならないという方は少なくないでしょう。これは,「覚える」ということを「記銘」だにとどめているからです。言い換えると,「覚えること」を「ただ頭の中に入れる」だけで終わってしまっているのではないでしょうか。本当の「覚える」ということは,覚えたことを維持し,そして「思い出す」ことができることです。大切なのは,テスト前にどれだけつめ込められるかということではなく,テストの時にどれだけ「思い出せる」かということです。

▼神経生理学的メカニズム
神経生理学的メカニズムでは,記憶は脳内の神経細胞と神経細胞との結合部である,情報伝達経路(シナプス)を形成,強化することです。シナプスの形成に大きな役割を果たすのが「カテコールアミン(catecholamine)」や「グルタミン酸」といった物質です。カテコールアミンとは,ドーパミン,ノルアドレナリン,アドレナリンの3つの神経伝達物質の総称で,興味のある好きな内容を覚えるときには,このカテコールアミンがシナプス間に分泌されることで,活性化状態になります。シナプスが活性化状態になることで,記憶は促進され,反復刺激を与えることなく覚えることができるのです。

こうして興味のあること好きなことは「カテコールアミン」や「グルタミン酸」といった神経伝達物質が多量に分泌されることで簡単に覚えられ,逆に,興味のない好きでないことは神経伝達物質の分泌量が十分でなく反復刺激を与えなければなかなか覚えられないのです。

「場所ニューロン(place neuron)」という,脳の記憶を司る器官である海馬にある,場所を記憶するときに活動するこのニューロンは,その場所の出来事や関連した情報も,たった一度の刺激で長期記憶にすることができるという特徴があります。これは場所ニューロンが活性化することで,数多くの神経細胞が活性化されるためです。これは興味のあることを覚えるときに「カテコールアミン」や「グルタミン酸」といった神経伝達物質が分泌されることでシナプスが活性化して記憶が促進されるのと同じ仕組みです。

このように場所ニューロンが一度の刺激で長期記憶を形成することができるのは,動物として本能的に場所ニューロンが長期記憶を形成することが不可欠であったからではないかと考えられています。それは危険な場所や安全な場所,餌のある場所を記憶することは動物として非常に大切であったため,本能的に他の記憶よりも重要視され,より長期記憶として記憶されやすいと考えられています。  つまり,「場所ニューロン」は動物の本能的な記憶を司る脳細胞で,場所に関する情報は脳内で重要な記憶と判断されます。場所ニューロンを使い,ネットワークを築きこれに絡めて新しい情報を記憶すれば,それが脳内で重要な記憶だと判断され,より長期記憶として記憶されやすくなります。

▼覚えやすい・覚えにくい
これまで,記憶の種類,記憶のメカニズム,記憶の神経生理学的メカニズムを述べてきましたが,覚えやすい・覚えにくいは何で決まるのでしょうか。

まず,好き・嫌いがあります。興味や関心のあること,好きなことはよく覚えることができ,逆に興味や関心のないこと,嫌いなことはあまり覚えることができません。これは,記憶の神経生理学的メカニズムで述べたとおりです。数学や社会が嫌いな人は,嫌いだから覚えられない,覚えられないからますます嫌いになるという悪循環に陥っています。ですから,記憶するものを「好きになる」ことあるいは「覚えること自体好きになる」ということで課題が覚えやすくなります。

(教心ネット:http://www.kyo-sin.net/)

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