基礎基本とは何か? だからゆとり教育が学力を低下させる
まずは読み書き計算を、次に自ら学び・自ら考える力の育成を
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2007.3.25
■塩水は電気を通すのに、砂糖水はなぜ電気を通さないのか?
 塩水(食塩水)と砂糖水で、一方は電気を通しもう一方は電気を通しません。なぜでしょう?

 というときに、ゆとり教育では「なぜなら・・・」と教えることができません。それは、「“イオン”については扱わないものとする」という歯止め規定のせいです。

【学習指導要領より】
中学校学習指導要領 第2章:各教科 第4節:理科
第2 各分野の目標及び内容 
2 内容
(6) 物質と化学反応の利用
※内容の(6)については,次のとおり取り扱うものとする。
イ 「エネルギーの出入り」については,定量的な扱いはしないこと。また,イオンについては扱わないこと。

 厳密には、現在はイオンは発展的内容として教えることができます。しかし、2002年度〜2005年度の4年間、中学校の教科書に“イオン”を載せることは許されませんでした。理由は、指導要領を逸脱するからです。こうして、文科省によって、イオンは勝手に発展的内容とされてしまい、当たり前の基礎基本として全ての子どもに教えることが事実上不可能になってしまいました。

 「塩水は電気を通すけど、砂糖水は電気を通さない。なぜなら、食塩は電解質だが、砂糖水は電解質ではないから」。こうした、理科の中でも最も基礎的基本的な原理(知識)を教えることができないのです。そのくせ文部科学省は「自ら考え、自ら学ぶ力を育てよ」と、全く矛盾したことを言っているのです。これでは教育が崩壊するのは必至です。

まずは、読み書き計算を
 「自ら学び、自ら考える力」の育成。これは確かに大切なことです。しかし、問題なのはそうした力をどういうプロセスで育てるのかという方法論です。

 先程述べたように、“イオン”さえも知らない状態で、どういう水溶液が電気を通し、どういう水溶液が電気を通さないのかを考えることは不可能です。

 もちろん、理解の早い子や塾などですでに習っている“わかる子”にとっては、不可能なことではないでしょう。問題は、理解の遅い子や塾に通っていない子です。

 現在、生活科や総合的な学習の時間はもちろん、教科の授業でも、体験したり、調べ、まとめ、発表する活動型授業が重宝されています。実は、この活動型の授業こそが学力低下をさせている一番の原因なのです。

 日本でも戦後、児童中心主義教育と呼ばれ、子どもの活動を中心にした教育が行われていました。こうした結果、“学力低下”が問題となったのです。また、1970年ごろに、アメリカやイギリスでも、子どもの興味関心に基づいた教育を行った結果、激しい学力低下を招きました。

 今、日本で行われているゆとり教育という教育は、戦後の日本、1970年ごろのアメリカ、イギリスで行われていた学力低下を招いた教育と全く同じなのです。つまり、ゆとり教育というのは学力低下を招く教育と同義なのです。

 では、なぜゆとり教育が学力低下を招くのか? それは、授業を聞いてもわからない子をつくっているからです。教科書を読んでも漢字がまともに読めないから意味がわからない、算数・数学を学ぼうにも計算さえもまともにできない。そういう「わからない、できない、何もできない子(基礎基本の学力が不十分な子)」を大量につくっているのです。

 最近、学習塾関係者の間でも、「こちらの指示がわからない子どもが増えた。以前はこんなことなかった」ということをよく耳にします。例えば、分数の足し算ひき算でつまづいている子に、「まず通分しなきゃ」とアドバイスしても、「この先生何を言っているの?」というような顔をする子がいます。「通分」という言葉の意味が「わからない」、あるいは言葉の意味はわかっても通分が「できない」のです。

ゆとり教育は、子どもを持ち上げるだけ持ち上げて、後で突き落とす教育
 ゆとりローンというのがありました。給料が右肩上がりで上がることを前提とした住宅ローンのことです。このゆとりローン、当初から破綻を懸念する声はありましたが、案の定破綻しました。後でローンの支払額が跳ね上がり、多くの人のローンの支払いが滞ったのです。

 後が怖いとはまさにこの事です。ゆとり教育も似たような状況にあります。ゆとり教育と平行して導入された絶対評価は、ほぼ基礎学力を反映していません。

 文部科学省の調査では、「12×231」のような2桁×3桁のかけ算の正答率は約50%ほどです。つまり、「小学生の2人に1人は、かけ算の筆算ができない」のです。かけ算の筆算さえできないのですから、その後の算数・数学でつまづくのは明らかです。しかし、それでも通知表に「1」がつかないのです。現在の通知表のつけ方で、「1」がつくことはほとんどありません。小学校では、「2」や「3」のどちらか、中学校に至っては「4」や「5」が乱発されています。

 確かに、子どもに「1」という最低評価のラベルを貼ることに抵抗はあります。しかし、だからといって筆算さえもできない現状を野放しにしても良いのでしょうか?

 必要なのは、「反復練習して、筆算ができるようにすること」です。しかし、ゆとり教育ではそれをやらず、「計算は出来ないけど、授業態度が良いからあなたの算数は、2(=ふつう)ですよ」と誤魔化された評価が与えられているのです。

 当然このツケは、後で(中学や高校で)払わされることになります。

できない、わからないが全てを台無しにする
 ある中学で授業を見学する機会がありました。顔見知りの中学生がいるので、その子が授業を受ける様子を観察しました。ところが、その子は、とても授業を聞いているようには見えませんでした。

 私は、放課後その子に「授業を聞かないと勉強がわからなくなるんじゃない?」と尋ねました。返ってきた答えは、意外なものでした。
 「ううん、授業を聞かないとわからないんじゃなくって、聞いてもわからないから授業聞いてないの」

 なるほど、勉強のつまづきとはこういうものかと思いました。子どもにとって、「できない」、「わからない」ものほど勉強を嫌いにさせるものはないと。授業を聞いてもわからないのですから、子どもが授業中、寝たり、隣の子とおしゃべりしたくなるのは無理もありません。

 現在、学校教育では、興味や関心を高め、それが子どものやる気を引き出し、こうした活力こそが子どもを学習へとかき立てる、という亡霊がとりついています。これは全くの幻想です。確かに、技量の高い教師やもともとモチベーションの高い児童生徒がいれば、こうした活動型授業も成果を上げるでしょう。しかし、少なくとも基礎学力に大きなばらつきがあり、様々な家庭環境の子どもが集まる公立の学校ではうまくいっていないケースがほとんどです。活動を中心に、自ら学び、自ら考える力を育成する。いや、その前にすべき事があるのです。

 どんなに子どもの興味を高めようとも、どんなに活動中心の授業を行おうとも、「1回教えてもらっただけでわかる子は、全体の1/3ほどとごくわずか」です。半数以上の子は、2回、3回、4回・・・と何度も反復練習して、やっと基礎学力が身につくのです。

 たった一度の、ドラスティックな授業だけで、子どもに基礎基本の学力が身につくと思ったら、それはただの幻想です。それとも、子どもに学力を身につけさせなくても良いと思っているのでしょうか?

だから、反復練習を
 脳神経系の発達は、個人差はあるものの10才頃まで成長するということがわかっています。10才の壁と言われるのはこのためでもあります。逆に言えば、脳神経系に連動した学力、すなわち読み書き計算の学力は、どの子も伸びる余地があるということなのです。

 「鉄は熱い内に打て」という格言のように、読み書き計算のような学力は、10才頃(小学4年生)までに養わなければいけないのです。

 ところが、今の学校教育では、まるであべこべのことが行われています。10才までのこの時期に読み書き計算をやらせずに、生活科など活動を重視した教育を行っているのです。これでは、自ら学び自ら考えるちからが養えないどころか、読み書き計算という基礎基本の学力さえも身につかないのは当然です。

 最近、学習塾関係者の間でまことしやかにささやかれていることは、
・鉛筆の持ち方がダメな子
・ぐちゃぐちゃな字を書いて、何が書いてあるのかさっぱりわからない子
・ノートの書き方がわからない子
・読み間違い読み飛ばしつまってばかりで教科書が全然読めない子
・ひらがなが読めない小学3年生
・指を使わないとひき算ができない小学4年生
・ひらがなばかりで漢字を使わない小学5年生
・分数・小数の計算ができない中学生

 こういう子どもたちがとても増えているということです。ここ数年の学力低下の一番の原因は、読み書き計算などの反復練習不足なのは明らかです。いったい学校では何を教えているのでしょうか?

 漢字がまともに読めない子が、調べ学習で事典を読むことができますか?計算問題さえも解けない子が、文章題を解いたり日常生活に算数や数学を生かすことができるでしょうか?

 同じ漢字、同じ計算でも、1回教えただけでできるようになる子もいれば、そうでない子もいます。だからこそ、2回、3回と反復練習して教える必要があるのです。昔から、学力の基礎基本が読み書き計算と言われたのはこのためです。ゆとり教育では、この読み書き計算が軽視されたから学力が低下してしまったのです。

 基礎基本の学力の定着なくして、自ら学び自ら考える力の育成などあり得ないのです。まずは反復練習を、そして、基礎基本の学力の底上げこそが必要なのです。自ら学び、自ら考える力の育成は、その後のことなのです。

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