脱ゆとり教育 −漢字学習、これからの教育のあり方−
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プレジデントファミリー2007年6月号より
▼1年生で習ったはずの漢字も2年生になるとすっかり忘れてる
 「授業で漢字を1字ずつ丁寧に教えて、しばらくしてテストをしてみると、びっくりするほど忘れてしまっている。そこで、他の1年生の先生方に、漢字テストのできはどうかと聞いてみたのです。すると、ほとんどの先生が『みんなそんなもんだよ』とおっしゃる。

 それが、学校の常識のようだ。

 国立教育政策研究所が行った「特定の課題に関する調査」でも、新出漢字の書きの方の正答率はおおむね6割程度だという。6割とは、3文字に2文字しか書けないということである。「効率よく作業する」の「こうりつ」の部分を、「公立」と書いたりする子は後を絶たない。意味も考えずに、ただあてずっぽうで書いているだけなのだ。このようにちょっと読みが変わったり、教科書とは違った熟語で出題されるだけで、とたんに漢字が書けなくなる。

 こうした傾向は、従来から指摘されていたことだが、自ら学び考える力を重視しているはずのゆとり教育になっても一向に改善されない。それどころか、むしろあてずっぽうでさえも書けない子が増えている、というのが教育現場に携わる人間の実感でさえある。

 いくつもの学力調査の結果に共通して言えることがある。それは、解答欄に何も答えを書かない(書けない)無答率が高いということである。先ほどの「公立よく作業する」と書いてしまった子は、実はまだましな方だったのだ。

 なぜ、こうしたことが起こるのだろうか?これはひとえに、教師の指導法に問題があるのにほかならない。文頭で述べた、『みんなそんなもんだよ』という現場教師の言葉が全てを物語っているだろう。今も昔も、現場教師が漢字学習ひとつとってもいかに無策だったか。

 ご存じの通り、2002年度から本格的なゆとり教育へと完全移行した。このゆとり教育下では、『該当学年で習った漢字の「書き」は、次の学年が終わるまでに漸次書ければよい』とされた。これはかいつまんで言えば、4年生で習った漢字の書きは、5年生で教えればいいということだ。小学6年生で習った漢字は、中学1年生で書けるようになればいいということになる。

 もともとは、漢字の書きはどの子も苦手なことだ。こうしたことへの配慮からゆとり教育では、漢字の書き指導に幅を持たせるようにした。しかし、これは功を奏すどころか、「誰が責任を持って漢字を書けるようにすればいいのか」という責任の所在をあいまいにしただけだった。中学校の先生にとってみれば、「これは小学校で習ったはずの漢字だから、当然書けるはずだ」と思っているだろう。小学校で習ったはずの漢字が不十分なまま、中学校へ進学してくる。ゆとり教育では、国がこのおかしな現象におすみつき与えてしまったのだ。これは要するに、単なる問題の先送りでしかない。6年生で習った漢字が中学1年生にになって、無条件で書けるようになるわけではない。書けるように指導しない限り、書けるようにはならない。論じるべきは、どのように漢字指導をしたら、漢字が書けるようになるのかという方法論だったのだ。

 では、漢字が定着する指導法というものは存在するのだろうか?答えは、簡単に見つかった。神戸市立の岡篤教師の実践だ(プレジデントファミリー2007年6月号「最新・最強の学習メソッド20」より抜粋)。「授業の最初に、前日までに教えた漢字を一通り全部書かせる」という方法だ。以下に具体例を示した。

・1日目:姉
・2日目:妹、姉
・3日目:番、妹、姉
 ↓
・7日目:鳴、園、歌、曜、番、妹、姉
・8日目:鳥、鳴、園、歌、曜、番、妹

 1日目に姉という漢字を習ったら、その日は姉とノートに書く。2日目は、妹という漢字を習った、前日の姉+妹をノートに書く。8日目以降は、1日目に習った姉という漢字をはずし、新たに8文字目の鳥という漢字を加えた7つの漢字をノートに書く。こうすれば、姉という漢字だけで7日間練習することができる。ここまで反復すれば、忘れる率はかなり減る。

 「つまり、漢字は1回で丁寧に教え込むより、何度も反復して書かせた方が、定着しやすい」のだ。こうした効果のある指導こそが、今教育に求めれているのである。ゆとり教育では、1回で丁寧に教え込む、もとい「1回で丁寧に学ぶ」ことこそが良い教育だとされている。こうした教え方で漢字が書けるようになるのだとしたら、全く問題はないのだが、相変わらず「公立よく作業する」に象徴されるように漢字の定着率は低いままである。ゆとり教育は完全に敗北したのだ。

 教育というのは、子どもの力を伸ばしてやることである。効果があるかどうかわからないような指導法に固執するより、その指導法が効果があるのかどうかをよく吟味しなければならない。効果のある漢字指導は、その成果を見れば歴然である。ここに学力低下を克服するヒントが隠されている。

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