| 教心ネット 学校心理学講座(認知心理学) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| │トップへ│認知心理学│臨床心理学│学校心理学│学習心理学│発達障害│ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ○間違ったものの見方・考え方 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 心理学の分野の一つに認知心理学と呼ばれる分野があります。この認知心理学は,人間の「知覚,記憶,思考といった心的機能の中でも知的側面」について研究する分野です。認知心理学では,人間が様々な情報をどのように処理しているのかという情報処理アプローチと呼ばれる立場に立っています。人間は様々な情報をどのように処理しているのでしょうか? また,この処理過程において,人間は時に間違った考え方をしたり,ゆがんだものの見方をしてしまいますが,このような誤りやゆがみはなぜ生じるのでしょうか? 間違った考え方やゆがんだものの見方の例として,10円玉を5回投げたときに,表と裏の出る確率をあげてみます。下の表のAとBの現象のうち,起こりうる確率が高い現象はどちらでしょう?
Aは表が2回,裏が3回で,Bは5回とも全部裏です。このAとBの2つは,ともに起きる確率は1/32で同じです。一見Aの方が確率が高そうですが,それは,普通私たちは「10円玉を投げたとき,表と裏が出る確率はだいたい半々で同じぐらいである」という知識をもっていて,「5回投げたら表と裏はだいたい(平均すると)半々ぐらいになる」と考えるからです。なまじそういう知識や考え方をもっているため,BよりもAの方が確率が高いと勘違いをしてしまうことがあります。 こうして「表と裏が半々ぐらいになる。だから全部裏になる確率はとても低い」と表と裏の出る枚数だけ考えてしまい,「表と裏がどの順番で,どのように出るか」までは考えていないからです。これは,表と裏が半々ぐらいになるという「代表性バイアス」による思考・判断の誤りなのです。 ※仮に,10円玉を5回投げたときに「A:表が2回,裏が3回出る」,「B:裏が5回出る」とした時,これはBよりもAの方が起きる確率は高いです。 数学では確率を教えても,確率判断までは教えていません。私たちは,日常生活の中で確率判断をしていますが,それがしばしば謝っているという場合が少なくありません。数学での教科教育において,確率や場合の数の計算の仕方を学ぶことも大切ですが,それ以上に習ったことを生かして日常生活において正しい確率判断ができるようになる教育も必要でしょう。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ○偶然でない偶然の一致 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 確率の話が出てきたところで,「偶然でない偶然の一致」について述べてみます。 問:「40人学級で,生徒の中に少なくとも誕生日が一致する生徒が2人以上(ひと組)存在する確率」はどれくらいでしょう?(直感で答えてください) 1.約0.3% 2.約11% 3.約50% 4.80%以上 答えは,4.の80%以上です。意外に高い確率ですね。それもそのはず,40人学級で誕生日が一致する生徒がひと組も存在しない確率の余事象だからです。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ○確率と確率判断 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 続いて確率の話をします。よく例題としても出てきますが,さいころを1回ふって1の目が出る確率は1/6である,の確率とはどういう意味でしょうか? 例えばさいころを60000回ふったとしたらそのうち1の目はおおよそ10000回出ます。そこで1の目が出る確率は10000/60000,つまり1/6となります。数学では10000/60000も1/6も約分すれば一緒です。確率1/6とは,おおよその割合としてさいころを6回ふってそのうち1回は1の目が出るといういう意味です。しかし,さいころを6回ふったら1回は1の目が出るのでしょうか? 先程も述べたように,さいころを60000回ふれば99%の確率で10000回は1の目が出ます。ところが,さいころを6回ふれば1回は1の目が出るかというとそうではありません。この辺が確率の難しさでもあり,誤解を招くところでもあります。 「確率1/6だから,さいころを6回ふれば1回は1の目がでるんじゃないの?」と思いますが実際には違います。ではさいころを6回ふって少なくとも1回は1の目が出る確率はどれぐらいあるのでしょうか? 計算がややこしいので,ここでは「さいころを6回ふって1回も1の目が出ない確率の余事象」として求めてみます。式は「1−(5/6)^6」となります。
さいころを6回ふって少なくとも1回は1の目が出る確率は66.5%となりました。100%とはほど遠い数字です。ちなみに10回ふっても確率は80%ほどです。学校の先生をしている方なら授業で試してみるといいでしょう。生徒全員を起立させてさいころをふらせてみて,1の目が出たら着席するというように・・・。40人学級なら10回ふっても1度も1の目が出ない生徒(運の悪い生徒)がいるでしょう。→実践例M-1 さいころをふって1の目が出る確率1/6というのは,60000回ふって10000回は1の目が出るとは言えるかもしれませんが,6回ふって1回は1の目が出るということは言えません。しかし,数学の確率という単元では,10000/60000も1/6も同じで,むしろ後者が正解と見なされます。これは児童・生徒を日常生活において正しい確率判断をできなくしてしまうおそれもあります。確率の単元では,確率の求め方だけではなく,確率の概念や確率判断というものもあわせて教える必要があると思います。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ○統計 −平均値って? | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 政府統計やテレビ・新聞報道などでよく「平均」とか「割合」といった数値がでてきます。平均値や割合は代表値と呼ばれるもので,それぞれ特徴と限界があり,またこれ以外にも代表値と呼ばれる数値がたくさんあることは意外に知られていません。 「日本人の平均貯蓄は約400万円である」 こう言われると、自分はとっても貧乏なのではないかと不安になります。一般的な家庭の貯蓄は100万円から200万円といったとこでしょう。では平均貯蓄400万とはいったい何を指しているのでしょうか。 日本人の平均貯蓄の出し方は、総貯蓄÷総人口です。今日本人の総貯蓄を500兆とします。それを総人口1億2500万人で割ると、400万円という数字が出てきます。これが日本人の平均貯蓄です。しかし、平均というのはあくまでも平均であって、日本人が400万円ずつ貯金をもっているということにはなりません。例えばいま3人の日本人がいるとします。Aさんの貯蓄は100万円、Bさんの貯蓄も100万円、Cさんの貯蓄は1000万円とします。この場合、3人の平均貯蓄は400万円になります。なにかがおかしいですね。そうなんです。400万円という数字は実情とはかなりかけ離れた数字なのです。3人の中にCさんのようなお金持ちが一人入っているだけで、平均値はおおきくずれた値となってしまうのです。この場合は「最頻値」という代表値を用いた方が適切です。最頻値とは、最も頻度の高い数値のことで、ここでは100万円が最頻値になります。この最頻値から読みとれることは、日本人の中では100万円程度の貯蓄をもっている人が最も多いということです。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ○推論過程(4枚カード問題) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 心理学の実験に「4枚カード問題」と呼ばれるものがあります。カードの表にはローマ字が,裏には数字が書いてあるカードが4枚あるとします。そして,カードの表にローマ字の大文字が書いてあれば,裏には偶数が書いてある,というルールが成り立っているかどうか調べるには,少なくともどのカードをめくる必要があるでしょうか,という問題です。 4枚カード問題:「カードの表にローマ字の大文字が書いてあれば,裏には偶数が書いてある」 というルールが成り立っているかどうか調べるには,少なくともどのカードをめくる必要があるでしょうか
この問題では多くの人が,ある勘違いをします。それは論理的思考のなかでも「命題,逆,否定,対偶」を正しく理解できていないことによります。問題文にある「カードの表にローマ字の大文字が書いてあれば,裏には偶数が書いてある」が正しいかどうかを調べるには,「表にローマ字の大文字が書いてあるのに,裏に奇数が書いてあるカードがない」ということを証明すればいいわけです。しかし,「裏に偶数が書いてある8のカードをめくる」と答える人が少なくありません。が,これは間違いです。裏が偶数なら表が大文字だろうが小文字だろうか,問題文が正しいかどうかの証明には関係ありません。それよりも,3のカードの方が問題です。それは,このカードの表が大文字であれば,問題文が間違っていることになるからです。従って,めくらなければいけないのはAのカードと3のカードです。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ○論理的思考(命題,逆,否定,対偶) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 先のような間違いはなぜおこるのでしょうか? それは,命題が正しいかどうかを調べるには,対偶が正しいかどうかを調べなければいけません。しかし,多くの人は逆が正しいかどうかを調べてしまうというミスをしています。 ここで,「命題,逆,否定,対偶」について説明しておきましょう。
これは高校の数学で習うことですが,これを数学だけにとどめてはいけません。私たちがいかに日常生活で誤った論理的思考をしているのかを考える必要があるでしょう。 例えば,まず「命題:正三角形ならば三角形である」とします。この命題は正しいです。このとき逆はpとqを入れ替えた「逆:三角形ならば正三角形である」となります。これは正しくありませんね。否定は命題を否定,pでないならばqでない,したものです。「否定:正三角形でなければ三角形でない」。これも正しくありません。最後に対偶は,逆でありなおかつ否定でもある「対偶:三角形でないならば正三角形でない」となります。これは正しいです。
さて,先ほどの4枚カード問題について考えてみると,「表が大文字ならば裏は偶数である」が正しいかどうか調べるには,まず命題が正しいかどうかを調べることです。そのためにAのカードをめくります。そして,3のカードをはちょうど対偶にあたるので対偶が正しいかどうかを調べなければいけません。逆や否定については調べる必要はありません。なぜなら,「命題が正しければ対偶も正しい」し,「対偶が正しければ命題も正しい」からです。そして,「命題が正しければ,逆も正しい」とは必ずしも言えないからです。
よくテレビ番組を見ていると, A:「総合的な学習の時間とは子どもたちが主体的に活動する時間のことです」 B:「子どもたちが主体的に活動することが総合的な学習の時間なんですね」 と,逆に言い換える人がいますが,これは間違いです。総合的な学習の時間ならば子どもは主体的な活動をするとは言えても,子どもたちが主体的な活動をしさえすれば総合的な学習であるとは限らないからです。 ほかにも,「殺人犯のような凶悪事件の犯罪者の脳には異常形態が見られる」という研究報告があります。これを聞くと「脳に異常形態のある人間は犯罪者になるのでは?」という人をワイドショーなどでたまにみかけますが,こんなことをいう人は全くの無教養な人間でしょう。こうした報告はだいたいが相関関係があるだけで因果関係があるとまで言っていません。ましてや正しいかどうかわからない命題「殺人犯のような凶悪事件の犯罪者の脳には異常形態が見られる」の逆「脳に異常形態のある人間は犯罪者になる」は必ずしも正しくありません。 このように,ふた言目には「命題の逆」を言う人がいますが,このような発言には注意が必要でしょう。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 【PR】認知心理学おすすめ書籍 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||